肩こりは“肩の問題”ではない?
ピラティスの専門家が教える「肩甲骨」と「コア」から整える根本改善法
はじめに:なぜ、あなたの肩こりは繰り返すのか?
「マッサージしても治らない」「ストレッチをしてもすぐ元に戻る」
そんな慢性的な肩こりに悩んでいませんか?
実はその肩こり、本当の原因は“肩そのもの”ではないかもしれません。
ピラティス指導において、数多くのクライアントの姿勢改善・不調解消をサポートしてきた私たちは、
肩こりの根本解決に必要なのは、「肩甲骨」と「体幹(コア)」の安定性だと考えています。
専門的視点から見る:肩こりの“隠れた原因”
ピラティスの教育体系では、姿勢や機能的な動作パターンを分析する際、「局所」ではなく「全体性」に注目します。
🔍肩こりを引き起こす主な要因:
- 肩甲骨の位置が不安定(肩がすくみやすい・巻き肩など)
- 胸郭の可動性が低い(肋骨が開きやすく、呼吸が浅い)
- コアが働いていないため、肩まわりが代償的に緊張してしまう
このような状態が続くと、肩の筋肉に常に余計な負荷がかかり続けることになります。
ピラティスの視点:「肩甲骨は浮いている」ってどういうこと?
私たちの肩甲骨は、骨に直接固定されておらず、筋肉の力だけで位置を保っている“浮遊骨”です。
つまり、肩甲骨は常に周囲の筋肉のバランスによって安定しており、それが崩れると…
- 肩こり
- 首の痛み
- 頭痛
- 腕の動きの不調
など、全身への影響が出てくるのです。
コアが安定しないと、肩甲骨も安定しない
ここが、ピラティスならではのアプローチポイント。
肩甲骨の土台は肋骨、そしてその肋骨を正しい位置に保持しているのが 体幹深部の筋肉(コアユニット)です。
🧠コアユニットの構成:
- 腹横筋(お腹のコルセット)
- 骨盤底筋群
- 多裂筋(背骨を支えるインナーマッスル)
- 横隔膜
これらが正しく働くことで、
- 肋骨の位置が整い、
- 肩甲骨がスムーズに動ける“安定したステージ”ができあがります。
ここが大事!肩こり改善の3ステップ
✅Step1:呼吸でコアを目覚めさせる「プリンティング呼吸」
仰向けの姿勢で、肋骨をしっかりと閉じながら息を吐く。
このとき下腹部をうすく保ち、骨盤の底から引き上げ、下腹部を背骨に近づけるイメージ。
✅Step2:肩甲骨を動かす練習「スキャプラ・グライディング」
仰向けで両腕を天井に伸ばし、肩甲骨を前へ押し出す→戻す動き。
肩ではなく“肩甲骨ごと腕を動かす”感覚を丁寧に。
✅Step3:コアと肩甲骨の“連動”を体感「クワドプラッド with スキャプラ安定」
四つ這いの姿勢で「体幹を安定させたまま、肩甲骨が床に落ちないように保つ」感覚を体感させます。
まとめ
観点 | 実践ポイント |
---|---|
解剖学的根拠 | 肩甲骨は“浮遊骨”。安定には筋機能が不可欠 |
姿勢・評価 | 肋骨の位置や胸椎の丸まりが肩甲骨の動きに影響 |
指導順序 | 呼吸→コア→肩甲骨の連動を意識したシークエンス |
キューイング | 抽象的な感覚(引き上げる・浮かせる)を丁寧に導く |
肩こり解消に効果的なピラティスエクササイズ【おすすめ5選】
① プリンティング呼吸
- 方法:仰向けで膝を立て、骨盤をニュートラルに保ったまま鼻から息を吸い、肋骨を左右に広げる。吐く息で肋骨を前で閉じ、お腹をうすく保ち骨盤底から引き上げるよう意識。
- 目的:コアユニット活性化・肋骨可動性UP
- キュー:
「鼻から吸って肋骨を左右に広げて」
「吐きながら肋骨を身体の前で編むように閉じる」
「骨盤の底から引き上げて、おへそを背骨に近づける」
② スキャプラ・グライディング
- 方法:仰向けで腕を天井に伸ばし、肩甲骨を天井方向へ押し出す。次に肩甲骨を背中に戻すようにスライド。肩をすくめず、腕全体ではなく肩甲骨を意識して動かす。
- 目的:肩甲骨モーターコントロール習得
- キュー:
「腕は耳に近づけず、肩甲骨ごと前に滑らせる」
「天井に届くように動かし、戻るのを感じて」
③ スイミングプレップ
- 方法:うつ伏せで額をマットに置き、吐きながら右手と左脚を持ち上げ、吸って戻す。左右交互に繰り返す。骨盤を安定させ、体幹を使ってバランスをとることがポイント。
- 目的:背面筋の強化、肩甲骨の安定
- キュー:
「骨盤はマットに重く置いて」
「手足よりも体幹でバランスをとる意識で」
④ セラバンド・オープンアームズ
- 方法:立位または座位でセラバンドを前に持ち、吐きながら肩甲骨を背骨へ寄せてバンドを左右に引く。吸って戻す。肩をすくめず、腕よりも背中で引く意識を持つ。
- 目的:肩甲骨内転と胸郭開放
- キュー:
「背中でバンドを引くイメージ」
「肩甲骨を寄せて、肩は下げたまま」
⑤ ウォール・エンジェル
- 方法:背中を壁につけ、腕をWの形にセット。肘と手の甲を壁につけたまま、Yの形になるまで腕をスライドアップ→ダウン。腰が壁から浮かないよう、体幹を安定させる。
- 目的:背骨と肩甲骨の連動、猫背矯正
- キュー:
「壁から腰が浮かないように」
「肩甲骨を背中でスライドさせながら腕を動かす」
自宅で簡単にできるエクササイズ道具のおすすめ
ストレッチポール:疲れた時はこの上で仰向けになるだけでOK
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セラバンド:呼吸の際、肋骨に巻いて使うのもおすすめです。
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最後に
この流れに沿って指導することで、コア→肩甲骨→肩まわりの連動改善が無理なく進み、
肩こりの根本的なリリースにつながります。
この知識が、ピラティス指導に携わる皆さまの現場で役立ち、肩こりに悩む多くの方のサポートになりますように。
このブログでは、ピラティスインストラクターとして20年の経験を通して感じてきたことや、これまで疑問に思ってきたことを、わかりやすくお伝えしていきます。
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