パーソナルレッスンを行う際、このレッスン内容でクライアントの要望を達成できるのだろうかと不安になることはありませんか?
また、実際にレッスンを行ってみたものの、あまり変化がなかったことなどありませんか?
今回はそんお悩みのために初心者インストラクターでも一定の結果が出せるプログラミング術をお伝えします。
姿勢を理解する
皆さんは、レッスンでクライアントの姿勢をどのように評価していますか?
「なんとなく猫背っぽいな」「骨盤が傾いてるかも…」という感覚も大切ですが、確かな「姿勢解析の視点」を持つことで、指導の質は一気に向上します。
姿勢解析の基礎知識・観察ポイント・実際のセッションへの応用まで、インストラクター向けに実践的な情報をお届けします。もちろん姿勢だけではなく実際に動きを見ながら都度修正を行うのが大前提ではありますが、まずは姿勢解析を理解して基本的な体の状態を理解しましょう。
なぜ姿勢解析が大切なのか?
ピラティスは「全身の再教育」です。目に見える筋力や柔軟性だけでなく、身体の使い方や動きのクセを見抜く力=姿勢解析力が求められます。
以下のような効果があります:
- 的確なエクササイズ選択ができる
- 代償動作の予防・修正がしやすくなる
- 継続的な成長を促すプログレッションが可能になる
インストラクターにとって、姿勢解析は「地図」であり「羅針盤」です。
まず押さえておくべき:正しい姿勢の基準
理想的なアライメントは、以下のランドマークが一直線になることが基本です(プラムライン評価)。
- 耳たぶ
- 肩峰
- 胸骨
- 大転子
- 膝前面中央
- 外果の少し前
また、背骨は自然なS字カーブ(頚椎前弯・胸椎後弯・腰椎前弯)を描いていることが理想です。

このアライメントを基準に、前後左右・上下のバランスを観察していきます。

姿勢解析のステップ
① 視診(観察)
- 前面・側面・後面からのアライメントを確認
- 肩・骨盤・膝・足の左右差を観察
- 緊張感・支持感のある部位に注目
② 姿勢分類によるパターン認識
タイプ | 主な特徴 |
---|---|
前弯後弯型 | 腰が反りすぎ・骨盤前傾・お腹突出 |
スウェイバック型 | 骨盤後傾・胸椎過後弯・重心後方 |
フラットバック型 | 脊柱のカーブが減少・動きにくい |
ミリタリー型 | 胸を張りすぎ・腰の筋緊張が強い |

③ 動作チェック(ダイナミック評価)
- ロールダウン・ブリッジなどで代償動作の有無や背骨の動かしやすさ、身体感覚についての確認
- 呼吸時の肩、肋骨の動き、体幹の安定性にも着目
ピラティスでの指導にどう活かす?
① 姿勢解析→姿勢分類によりプログラムの土台を作成
初回カウンセリングや体験レッスン時に行う「姿勢分析」。
あなたの姿勢タイプを正確に知ることで、最適なエクササイズプログラムが見つかります!
ここでは代表的な姿勢タイプとそのチェックポイントをご紹介します✨
✅ 理想的な姿勢(ニュートラル)
耳・肩・骨盤・くるぶしが一直線!
自然な背骨のS字カーブが保たれ、全身のバランスが取れた姿勢です。
チェックポイント:
- 横から見て耳・肩・大転子・膝・くるぶしが一直線
- 腰は手のひら1枚分のすき間
- 肩はリラックスして落ちている
- 骨盤が前にも後ろにも傾きすぎていない(ニュートラル)
🔴 カイホロードシス型(猫背+反り腰)
猫背+反り腰の混合タイプ。
姿勢がくずれやすく、肩こり・腰痛が起きやすい姿勢です。
チェックポイント:
- 頭が前に出て顎が上がっている
- 肩が内巻き(巻き肩)
- 肋骨が前に突き出ている
- 骨盤が前傾し、腰のカーブが深い(反り腰)
- 下腹がポッコリ出ている
🟡 ロードシス型(反り腰)
腰が強く反っているタイプ。
立ち仕事やヒールの使用が多い人に見られます。
チェックポイント:
- 腰の反りが強い(手のひら2枚分以上)
- 骨盤が前に倒れている(前傾)
- 下腹が前に出ている
- 太ももの前が張っている
- 顎が上がっていることが多い
🔵 フラットバック型(平背)
腰や背中のカーブが少なく、真っすぐな背骨。
可動性が少なく疲れやすい姿勢です。
チェックポイント:
- 腰が真っすぐすぎてアーチがない
- 骨盤が後傾しお尻が下がって見える
- 背中が硬く動かしにくい
- 膝が過伸展してロックしている
🟠 スウェイバック型
骨盤が前にスライドし、上体は後ろに倒れる姿勢。
見た目には立っていても体が“くの字”になります。
チェックポイント:
- 骨盤が前に出ている
- 胸郭が後方に倒れている
- 肩が後ろに引けているように見える
- 重心がかかと側に偏っている
- 首が前に出ている
🟣 頭部前方姿勢(スマホ首)
デスクワーク・スマホ時間が長い人に多い姿勢。
首や肩こり、目の疲れの原因にも。
チェックポイント:
- 耳が肩よりも前に出ている
- 顎が上がっている(しゃくれたように見える)
- 肩がすくみ、胸が狭く感じる
- 首の後ろが詰まって見える
- 呼吸が浅く、口呼吸になりやすい
■ 姿勢タイプ別の指導ポイント
- スウェイバック型:体幹と骨盤の再教育、ニュートラルポジションを維持
- 前弯後弯型:胸椎・股関節の伸展を促進、腹筋とのバランスを整える
- フラットバック型:脊柱の自然なカーブを育てる、特に胸椎の屈伸性
- ミリタリー型:過緊張の解除と柔軟性向上、過度な姿勢維持をほぐす
② 動作チェックで動きの癖を理解する
ピラティスセッションでは、姿勢の歪みや筋肉の使い方のクセを見極めるために、「動きの評価(ムーブメントアセスメント)」を行います。
以下のエクササイズは、専門的な視点でお客様の身体の状態を確認し、今後のセッションをより効果的に進めるための大切なステップです。
✅ 評価に使う基本エクササイズ一覧
1. ニュートラルポジションの確認(仰向け)
骨盤の自然な位置を確認することで、正しい姿勢の土台を整えます。
2. 呼吸(ラテラルブリージング)
・鼻から吸って肋骨を左右に広げる
・口から吐きながら肋骨を締める
▶︎ 胸郭の柔軟性、肋骨の可動域をチェック!
3. プリンティング/インプリンティング
・仰向けで、背中のアーチを意識的に動かす
▶︎ 腹横筋(コア)の活性度を確認
4. ペルビッククロック
・骨盤を時計の文字盤のように前後左右に傾ける
▶︎ 骨盤のコントロール力、柔軟性を評価
5. キャットストレッチ(四つ這い)
・背骨の丸め伸ばし(フレクション&エクステンション)
▶︎ 背骨の動きの滑らかさをチェック
6. アームサークル
・肩を安定させながら腕を回す
▶︎ 肩甲帯と体幹の連動を確認
7. ダイヤモンドブレス
・仰向けで脚をダイヤ型に開き、呼吸と骨盤の安定を意識
▶︎ 骨盤と胸郭の連動を確認
8. ヒップリリース
・股関節をゆっくり開閉しながら骨盤の動きを見る
▶︎ 股関節の可動域とコントロールを評価
9. スパインツイスト
・仰向けで膝を左右に倒す
▶︎ 背骨の回旋の柔軟性を観察
■ 姿勢タイプ別|おすすめエクササイズ一覧
姿勢タイプ別 ピラティスで整える!おすすめエクササイズ一覧
それぞれのストレッチすべき筋肉と強化すべき筋肉、そして【おすすめエクササイズ】をまとめました!
✅ 理想的な姿勢(ニュートラル)
特徴:
耳・肩・骨盤・くるぶしが一直線、自然なS字カーブの理想姿勢。
目的: より安定した体幹と全身バランスを整える。
おすすめエクササイズ:
- ニュートラルブリージング(呼吸とコアの安定)
- ペルビックティルト(骨盤の可動性)
- ヒップロール(脊柱分節と臀筋強化)
- アームスライド(肩甲帯の安定)
🔴 カイホロードシス型(猫背+反り腰)
特徴: 肩が前に巻き込み、肋骨と骨盤が開きすぎ、腰が反っている。
ストレッチ: 胸筋、大腿四頭筋、腸腰筋
強化: 腹横筋、ハムストリングス、臀筋
おすすめエクササイズ:
- チェストリリース(壁orローラー)
- アブプレップ(肋骨を締める)
- ペルビックティルト&ブリッジ
- ハムストリングスストレッチ
🟡 ロードシス型(反り腰)
特徴: 骨盤が前傾し腰が過剰に反る。下腹が前に出やすい。
ストレッチ: 腸腰筋、前もも、腰部
強化: コア、臀筋、もも裏
おすすめエクササイズ:
- ニュートラルブリージング
- ハンドレッド(膝曲げて軽減)
- サイドレッグシリーズ
- スプリットスタンス(ランジ)
🔵 フラットバック型(背中まっすぐ)
特徴: 背骨の自然なカーブが失われ、柔軟性が不足。
ストレッチ: ハムストリングス、腹筋
強化: 背筋群、臀筋、脊柱モビリティ
おすすめエクササイズ:
- キャットストレッチ
- ショルダーブリッジ
- スワンプレップ
- ハムストリングスリリース
🟠 スウェイバック型(骨盤前方・上体後方)
特徴: 骨盤が前に出て、胸郭が後ろに倒れ、腹筋が使えない。
ストレッチ: ハムストリングス、腹直筋
強化: 腹斜筋、中臀筋、コア
おすすめエクササイズ:
- スパインツイスト
- ウォールエルボーリーチ
- 壁スクワット
- ロールダウン
🟣 頭部前方姿勢(スマホ首)
特徴: 頭が前に出て、肩がすくみ、呼吸が浅くなる。
ストレッチ: 胸筋、僧帽筋上部、後頚部
強化: 頸部深層筋、肩甲骨安定筋、背部中部
おすすめエクササイズ:
- チンタック(仰向け)
- パペットアーム
- スキャプラリトラクション
- スワンロール(首を長く)
観察力を高めるためにできる
- 日常の立ち姿・歩行を観察するクセをつける
- ビフォーアフター写真や動画を活用
- 「変化の兆し」をフィードバックに活かす
- 複数の視点(視診+触診+動作)を組み合わせる
まとめ|インストラクターの「眼」がクライアントの変化を導く
姿勢解析は「動きの質の変化」を引き出すための第一歩。
ピラティスの原則に沿った観察力とアプローチを身につけることで、
あなたの指導が、もっと「深く」「的確に」なります。
ぜひ今日から、クライアントの姿勢に少しだけ丁寧なまなざしを向けてみてくださいね!
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※このプログラムはPIC System™を元に作成しました。PIC System™はオーストラリアのPilatesITC(オーストラリア政府認定のピラティス教育機関)が開発した、ピラティス指導者向けのプログラム構成法で、全身を安全かつ効果的に鍛えるためのエクササイズ分類システムです。
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