「くしゃみをすると漏れてしまう」
「お風呂上がり、膣から水が出てきてしまう」
「縄跳びやジャンプを避けてしまうようになった」
これらは、40代以降の女性に多い“あるある”なお悩み。
その原因の多くは、見えない筋肉「骨盤底筋群の脆弱化」にあります。
しかし、骨盤底筋群は単独で存在しているのではありません。
横隔膜、腹横筋、多裂筋とともに「インナーユニット(体幹深層筋群)」を形成し、呼吸や姿勢制御、内臓サポートなどに関わる、極めて重要な役割を持っています。
この記事では、骨盤底筋群の緩みの本当の原因と、横隔膜や股関節との“連動性”にフォーカスしながら、ピラティス的なアプローチによる改善法を詳しく解説します。
1. 骨盤底筋群とは?──“内なる底”を支える縁の下の力持ち
骨盤底筋群は、恥骨・尾骨・坐骨を結ぶようにして、骨盤の底部を覆うように広がるハンモック状の筋肉の集まりです。
その働きは多岐にわたり、以下のような役割を果たしています:
- 膀胱・子宮・直腸など内臓を支える
- 排泄機能(排尿・排便)のコントロール
- 性機能や出産時の補助
- 呼吸・姿勢の安定化
- 腹圧の調整を通じた体幹の安定
つまり、骨盤底筋群は“骨盤の底”で体を内側から支える、私たちの根幹とも言える存在なのです。
2. 骨盤底筋群が緩む原因
● 出産による損傷
特に経腟分娩では、出産時に骨盤底筋やその周囲の神経が損傷を受けやすく、筋力低下や感覚の鈍化につながります。
● 加齢とホルモンの変化
更年期以降、エストロゲンの減少により筋肉の柔軟性・弾力性が低下。骨盤底筋群の支持力が弱まることがあります。
● 姿勢の崩れ
猫背や反り腰、骨盤の前傾・後傾などの不良姿勢が続くと、骨盤底筋群に常時ストレスがかかり、慢性的に緩みやすい状態に。
● 呼吸機能の低下
胸式呼吸や浅い呼吸が習慣化すると、横隔膜がうまく動かなくなり、骨盤底筋も機能低下を起こします。
● 股関節との連動不全
骨盤底筋群と筋膜的・機能的につながる股関節まわりの筋肉が働かないと、骨盤底筋も“使われない筋肉”として衰えていく傾向にあります。
3. 骨盤底筋群と横隔膜──上下の“蓋”が連動してはじめて機能する
骨盤底筋群と横隔膜は、それぞれ骨盤と胸郭の“底”と“天井”に位置していますが、呼吸において密接に連動しています。
● 呼吸と骨盤底筋の動き
- 吸うとき:横隔膜が下がり、同時に骨盤底筋群も軽く沈む
- 吐くとき:横隔膜が上がり、骨盤底筋群も引き上がるように収縮
横隔膜と骨盤底筋群は腹圧を調整する上下のパートナーであり、その連動が崩れると骨盤底筋への負担が増します。
4. 骨盤底筋群と股関節筋とのつながり
骨盤底筋群は股関節を囲む筋群とも連動しています。特に関係が深い筋肉は以下の通りです:
- 内転筋群:筋膜で骨盤底筋群と連結し、同時収縮が起きやすい
- 大腰筋:インナーユニットの一部として、骨盤と姿勢を安定
- 中臀筋・小臀筋:骨盤の左右の安定に関与
股関節の動きが悪くなると骨盤底筋の働きも妨げられ、感覚が鈍くなっていきます。
5. ピラティス的アプローチで骨盤底筋を目覚めさせる
● 呼吸を使ってインナーユニットを起動させる
エクササイズ①:仰向け呼吸+骨盤底筋の意識
- 仰向けで膝を立て、背骨をニュートラルに保つ
- 鼻から吸い、横隔膜が下がるのを感じる
- 口から吐きながら「膣と肛門を引き上げる」ように意識
- お腹が薄く引き締まる感覚があればOK
※内ももにボールを挟むと意識しやすくなります。
● 動きと一緒に骨盤底筋を活性化
エクササイズ②:ペルビックカール(ブリッジ)
- 仰向けで膝を立てる
- 吐きながら尾骨→腰椎と順に背骨を持ち上げる
- 骨盤底・内もも・下腹部を引き上げる意識でキープ
- 吐きながら背骨を上から順におろす
● 姿勢と股関節を整えながら骨盤底筋を鍛える
エクササイズ③:クラムシェル with 骨盤底意識
- 横向きで膝を曲げて寝る
- 骨盤を安定させながら上の膝を開く
- 骨盤底筋と下腹部の引き上げを意識
- 10回程度繰り返す
6. 骨盤底筋を再教育する3つのキーワード
- 感じること:意識の再接続
- 呼吸と連動させること:横隔膜との協働
- 股関節を動かすこと:動きの中で活性化
まとめ:骨盤底筋は“ひとりで働かない”──だから全身で再教育する
年齢や出産、ホルモン変化で骨盤底筋が弱くなるのは自然なこと。
でも、正しいアプローチをすれば、何歳からでも“目覚めさせる”ことは可能です。
ピラティスは、見えない筋肉を“感じる力”に変え、呼吸・姿勢・動きとつなげていくメソッド。
骨盤底筋群と横隔膜の連動性を回復し、股関節と協調して動くことができれば、尿漏れや姿勢の崩れ、腰痛やぽっこりお腹にも自然と変化が起きてきます。
“下から支える力”をもう一度取り戻すために、今日から小さな一歩を始めてみませんか?
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