ピラティスで大切にしていること——体の中心から生まれるエネルギー
ピラティスエクササイズにおいて、私が最も大切にしていること——それは、“身体の中心から自ら生み出すエネルギーの方向性”です。
「体幹を鍛える」とは少し違う、本当の中心の使い方
単にコアを鍛える、腹筋を強く使うということではなく、身体の中心から動きに応じた適切な出力を行い、そのエネルギーの「方向」を自らコントロールしていく感覚——これが本質だと考えています。
とはいえ、この「中心」は人によって捉え方が異なります。そもそもの呼吸の仕方が違っていたり(背面が使えていないため、肩や首に頼った浅い呼吸になっていたり)するため、誰にでも共通するように言語化することは簡単ではありません。
パーソナルレッスンで伝えていること
だからこそ私は、ひとり一人の体の状態、呼吸の傾向、エネルギーの流れを見極めた上で、その人に合った「体の中心への意識の向け方」をパーソナルレッスンで丁寧にお伝えするようにしています。
そして、身体の中心を感じたうえで、奥深くから呼吸をゆったりと行っていくのです。
呼吸は、動きの準備を整えるもの
ピラティスではよく「呼吸が大切」と言われますが、私にとって重要なのは、呼吸そのものというよりも、呼吸によって中心部の筋肉が自然に活性化し、中心から動きを生み出す準備が整うという点にあります。
ここでいう「中心」は、一般的な用語でいえばコアの筋群——腹横筋、横隔膜、多裂筋、骨盤底筋などです。これらの筋肉がしっかりと働くような呼吸の仕方を、まずは身につけていく必要があります。
正しい姿勢が、正しい呼吸をつくる
そのために欠かせないのが姿勢の矯正です。骨盤、胸郭、頭蓋骨を縦に一直線に積み上げるように整え、特に骨盤と肋骨の位置を縦に揃えて腹腔に意識を向けていきます。
ただ、自分では「良い姿勢」だと感じていても、実際は違っていることが少なくありません。身体は神経系によって動かされており、感覚にズレがあると、誤った姿勢を正しいものだと脳が認識してしまうのです。
だからこそ、身体感覚を鍛えることがピラティスでは非常に重要です。
身体感覚の低下が引き起こすこと
しかし現代人の多くは、日常的に自分の身体に意識を向ける習慣がないため、感覚がどんどん鈍くなり、「今、自分の体がどうなっているのか」を感じ取る力が低下しています。
たとえば、段差がある場所で足を上げたつもりが、段差の分だけ上がらずにつまずいてしまう……そんなことも、身体感覚の衰えが原因で起こります。
だからまずは、自分の体の感覚を取り戻すことが不可欠です。
【実践】簡単な感覚トレーニング
まずは簡単な練習から始めてみましょう。
- 目を閉じて、自分の足の位置、足先の向き、骨盤、胸、頭の位置を確認します。
- 「背中に見えない壁がある」とイメージし、その壁に体のどの部分が接しているのかを感じてみてください。
こうして意識を向けることで、少しずつ身体感覚は磨かれていきます。
アンカーという感覚を体験する
ピラティスには「アンカー」という概念があります。これは、重力のある地球上で私たちが「床に対して体を重く置く」感覚のことです。
ただし、床に体を押しつけるのではありません。まるで砂風呂に入っているように、体が自然とじわっと床に沈んでいくような感覚です。
このアンカーの感覚を養うために、さまざまなワークや道具を用いて練習していきます。
【ワーク】体の中心を感じる呼吸
安定した場所に座ります。椅子でも、床でも構いません。
- 坐骨が床に沈む感覚を感じ、骨盤・胸・後頭部を見えない壁に並べて整えます。
- 恥骨の上・下腹部に両手を当てて、体の中心をイメージします。
- 息を吐くときに、中心から外へと吐息が流れていくように感じてみましょう。
- 姿勢を保ちつつ、坐骨は下へ、体の中心は上へと引き上げられるよう意識します。
- 下腹部が自然と活性化されるのを感じながら、呼吸を続けます。
- 息を吸うと肋骨が横・後ろに広がっていく感覚、頭頂が天井に引き上がる感覚を加えてみましょう。
これだけでも、体の中心への感覚が高まり、「コア」がしっかりと働き始めるのが感じられるでしょう。
ピラティスは“生き方”を整えるもの
ピラティスエクササイズを行う間は、常に体の中心を意識し、そこから呼吸を行うこと、下腹を活性化した状態を保つことが重要です。
ただし、いつも同じ出力をするわけではありません。
動きの方向性や、かける負荷によって、エネルギーの出し方は変化します。
また、体位(座位・仰向け・横向きなど)が変わると、重力との関係も変わり、それに応じてエネルギーの方向や強さも変化します。
この「エネルギーの方向性や出力を自らコントロールする力」こそが、ピラティスにおけるスキルであり、極めて重要な概念です。
最後に:ピラティスは、毎日を快適に生きるためのメソッド
スキルは一朝一夕では身につきませんが、繰り返し練習することで確実に育まれます。
そして、体の中心をしなやかに、力強くコントロールできるようになれば、日常生活のあらゆる場面でその力は役立ちます。
ピラティスをするためのピラティスではなく、
“毎日を幸せに、快適に、心地よく生きるための身体の使い方”を学ぶこと。それこそが、私の考えるピラティスです。



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